第七十五号 それでも私は私

第七十四号でも触れましたが、私は本が大好きです。
そのために、本から学ぶ機会が多くあります。私が読むのは、ほとんど小説です。中でも推理小説や時代小説がほとんどで、その中から感じるのは『楽をしたいと思う気持ちが強い人ほど、一攫千金を望む人ほど』間違った道へ迷い込んでしまうことを学びました。
前回の七十四号でも紹介しましたが、ある小説に『人生には近道はない』とあり、また『不幸へ向かう門は大きく広いが、幸福への門は小さく狭い』と書いてありました。実は、こんなことを書いた私ですが、できることならば、楽に生きたいと言う気持ちを多く持っているのでした。
話は変わりますが、ペットの飼育や、花や野菜の栽培は、楽をして育てられるものではありませんよね。動物や植物を育てる行為から、人の在り方を学べるような気がします。
初めの詩は、自分自身に向けて作ってみたものです。
国リハで、慣れない勉強が始まり、テストの結果がそこそこ良かったので、誰もほめてくれないことを理由にし、自身で自分をほめてみた詩です。
学問に自信のない私だからこそ産まれた詩です。どうぞ読んでください。

〈MASATO君へpartⅡ〉

こんかいは頑張ったね
やればできるじゃないか
25年ぶりだったのだろう
国リハで前期末試験だなんてさ
なにを頑張ったのかって
言ったかい
何が
不満なのだい
誰がなんと言ったって
真剣に机に向かっていたじゃないか
俺はちゃんと見ていたぜ
世界中が否定したって
神様だけは知っているぜ
今年の3月11日に
空前絶後の震災があって
一縷の願いまで
津波に
飲み込まれそうになり
新たな出発はできるのかと
心配していたのだぜ
それにしても時間は
泣こうが笑おうが
ただ粛々として
滔々と流れることが
よくわかったよ
これからは
どんな時にでも
冬夏青青たる
者でありたいね
あの日から
君の時計は
14時46分で止まったままだったのだろう
いつの間にか
春彼岸が過ぎ
暑い夏は
韋駄天のように
駆け抜けて行ったね
ツクツクボウシの声は
季節に飲み込まれ
今朝は
こんなに長い日差しが
窓から顔を見せて
君に安らぎさえ
与えてくれているじゃないか
ああ秋なんだなあ
あたりまえのことを言うな
なんて言ったかい
それもそうだね
後期末を迎えるにあたり
反省点は反省点として
改めなければね
やはり
地味にコツコツと
歩んでいる者こそが
華々しい結果を残すことを
知ったよね
それだから
くじけずに行こうぜ
弱音を吐いたって
いいのだよ
足踏みなんか
当たり前だろう
振り返り振り返りしながらも
行く道だけは
心に決めて
そろそろと行こうぜ
疲れた時には
休めよ
元気になったら
また胸を張ればいいのさ
窓を開けて
胸いっぱいに
朝の息吹を
体と心に
流し込んでみろよ
そうすれば
君が宇宙に溶け込んでいくのを
感じられるだろう
歳なんか関係ないさ
人生の終わりまで
できることは
怠らず
行けるところまで
行ってみようじゃないか

※ 冬夏青青(とうかせいせい):松やこのてがしわといった、常緑樹は色を変えることなく冬も夏も青々と茂っていることから、節操が堅く、常に変わらないことのたとえ。
国リハ(こくりは):国立障害者リハビリテーションセンター。ここで、鍼灸マッサージ師(鍼師・灸師・あんまマッサージ指圧師)の資格を取るための勉強をさせて頂きました。
☆ 私のような視覚障害者の自立のための施設は、全国にありますが、この詩を載せていただいている、全国ベーチェット協会 視覚障害者支援センター熊谷では、もう一度パソコンをより詳しく教わりました。
▽ この詩は、東日本大震災のあった年の秋に作ったものでした。
話は変わりますが、皆さんは、変わらない信念を持っていますか。「あなたは持っていますか?」とは聞かないでくださいね。
私は想うのですが、変わらない信念を持つことは、ある意味で、諸刃の剣(つるぎ)のように思います。
次の詩は、コンプレックスの塊のような自分を励ますために作った詩です。
どうぞ読んでください。

〈それも私〉

痩せるも好し
太ってもまた好し
なぜなら
それもあなたなのだから
・・・・
笑顔も好し
膨れっ面もまた好し
なぜなら
それもあなたなのだから
・・・・
若きも好し
老いるもまた好し
なぜなら
それもあなたなのだから
・・・・
見えれば良し
見えザるもまた良し
なぜなら
それも私なのだから
・・・・
張り切っていても良し
休んでいてもまた良し
なぜなら
それも私なのだから
・・・
前を向いていても良し
項垂れていてもまた良し
なぜなら
それも私なのだから

▽ 小さなことですが、前半の「好し」と後半の「良し」を変えてみました。お気づきでしたか。
前半は、どんなあなたでも好きですと言う意味で「好し」とし、後半は、日々変わる私ですがそれも良いと言う意味で「良し」としてみました。
ある小説に『男子、三日会わざれば刮目(かつもく)して見よ』と書いてあったのを想いだしました。この格言では、人は良い方向に変わるものという意味で言っているのでしょうが、悪い方向に変わったなら、困りものですね。
今回も、最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
※ 刮目(かつもく):《「刮」は、こするの意》目をこすって、よく見ること。注意して見ること。
石田眞人でした