皆さんんは『花明り』という言葉を聞いたことはありますか。俳句を嗜む方であればよくご存じの言葉だと思います。俳句界では『花』と言えば、ずばり『桜』を指すのだそうです。
花明り…なんとロマンチックな言葉でしょう!『満開の桜が、星月夜の闇の中で、ふわっと光っている』ようすを思い浮かべてください。
行田も隣の吹上も、三月下旬には町中が桜で飾られます。今年も、そんな季節も間近になりました。
そこで、いにしえを思い、一句ひねってみました。
「初恋の涙に浮かぶ 花明り」…大変失礼しました。余談はこのくらいにして、本題に入ります。
私が40歳の頃、次のような話を聞きました。
『ある街に大金持ちのOさんが住んでいました。Oさんには身寄りはいません。ある日Oさんは、病気になり余命三か月と宣告されたのです。それでOさんは、日頃からお世話をしてくれていた親友のAさんとBさんを家に呼び、言いました。「二人に何かお礼がしたい」とです。お金以外は何も思いつかないOさんは、二人にお金をあげることにしました。それで二つの中からひとつを方法を選んでもらうことにしたのです。
その方法とは、一つ目は明日また訪ねてもらい、一回でまとめて1億円をあげることです。二つ目の方法は、明日から毎日訪問してもらい、一日目には1円、二日目には2円、三日目には4円、四日目には8円というように、毎日倍倍してゆく方法でした。それを30日間、晴れの日も雨の日も風の日も休まず訪れてもらうことを条件にしたのです。
その話を聞いたBさんは一も二もなく、まとめて1億円をもらうことに決めたのでした。しかし、Aさんはよくよく考え逡巡した末に、30日間でもらうことを選んだのでした。』
皆さんならどちらを選びますか?どちらが多くいただけるのか、計算してみましょう。その結果を見て皆さんも選んでください。私から、抽選でおひとりの方に…差し上げられるはずはありませんが!…少し単調で長くなりますが、お付き合いくださいね。
『一日目1円・二日目2円・三日目4円・四日目8円・五日目16円・六日目32円・七日目64円・八日目128円・九日目256円・十日目512円・十一日目1024円・十二日目2048円・十三日目4096円・十四日目8192円・十五日目1万6384円・十六日目3万2768円・十七日目6万5536円・十八日目13万1072円・十九日目26万2144円・20日目52万4288円・二十一日目104万8576円・二十二日目209万7152円・二十三日目419万4304円・二十四日目838万8608円・二十五日目1677万7216円・二十六日目3355万4432円・二十七日目6701万8864円・二十八日目1億3421万7728円・二十九日目2億6843万5456円・三十日目最終日5億3687万0912円』と、こんな結果になりました。
この話を、自身の人生に例えると、私は二十日目くらいではないかと思います。皆さんの人生を、この話に例えると、何日目くらいになると思いますか。この結果を見て、皆さんは何を感じ、何を想いますか?
人生経験を積んだ今、この結果を見て思うのは「継続は力なり」や「ローマは一日にして成らず」という諺です。
日本球界からアメリカへ渡り、大リーガーとして活躍した、イチロー(鈴木一郎)の言葉に次のようなものがあります。「小さいことをコツコツ続けることが、とんでもないところへ行く一つの道」私はこれを聴いて、今日までの歩みを想わざるを得ませんでした。そして、最後まで諦めずにコツコツと生きてみたなら、その最後には何があるのだろうかと思うと、楽しくなります。
初めの作品は、私が生まれて初めて本気で作った詩です。
見えなくなって、できなくなったことを数えている時に、心にのしかかってきた「大好きな桜を今後一生涯見られなくなってしまった寂しく切ない思いと、本当に見た夢の喜び」とを書き連ねてみたものです。
この夢には、言葉では言い尽くせないほど励まされ、気持ちを明るくしてもらいました。決して大げさではなく、この時は神様の存在を信じました。それほど心を動かしてくれる夢は、一生のうちでこれきりだと思います。
皆さんも、ぜひ心で感じ取ってください。

〈花明り〉

人生最高の喜びを知りたい
相対的で刹那的な喜びではなく
普遍的でユニバーサリティーで
絶対的な喜びを
そんな喜びのために
今日まで夢中で生きてきた
暗中模索な内に汗を流し
涙を流し…血さえ流した
そうして 病気になり光を失った
目を失うことで心も失くした
心が無ければ 人生は暗翳に過ぎない
その時 人生とは…
目で見るものではなく
魂で感じるものだと知った
・・・・
やがて 新年を迎え 桜前線が話題に上った
私は今後桜の花を見ることはできないと
悔し涙で畳を濡らした
その日の夜 夢を見た
大人二人が両手を広げ
やっと抱えられるほど太く 大きく そうして
澄み渡ったスカイブルーな空までにさえ
届かんんばかりな 八重桜の夢を
その 伸び伸びと 高く広げた枝えだには
薄紅色に染められた可愛らしい花々が
互いを引き立てあうように音もなく 粛々と
しかし 厳然たる風貌で 咲いている
その堂々たる姿で
優しさに頬を緩め
私に微笑みかけている
真綿のような真白な雪を頭に乗せ
裾野を広げた
遠くに輝く山々でさえ
こぼれんばかりに咲き誇る
八重桜の美しさに
霞んでしまう
柔らかな風が全身を包み
深く穏やかに 青さが続く空は
こんもりと盛られた八重桜を引き立てる
・・・・
映画の一こまに
迷い込んでしまったような
景勝風景は
その一瞬一瞬が
心のフィルムに焼き付けられる
薄紅色に頬を染めた
花弁のひとひらひとひらは
哀願する 求不得苦に語りかけながら
太陽の光を一身に受け
春の温かな風に優しく包まれ
スローモーションの世界を泳ぐように
優雅に舞い降りる
その時私は布団の中で
神の優しさに触れ
神の深い愛と出会い
心身の震えを止められなくなった
その朝 声を潜めて泣いた
・・・・
目を失って見えるものもある
一粒の汗はプラス1
一粒の涙もプラス1
失った眼さえもプラスに変えて
見えないからこそ
ひとつの喜びも知った
地獄を知れば天国さえ見える
死ぬのはやめて
最後まで生き続けてみよう
最高の喜びを夢見ながら
遠回りしてもいい
休んでもいい
振り返ってもいい
思い悩むのがあたりまえ
苦しいのは当然のこと
歯を食いしばり
地団太を踏みながら
大声で慟哭し
最後まで生き続けてみよう
最高の喜びを夢見ながら
その先には溢れる太陽が待っていることを信じて

※求不得苦(グフトクク)とは:仏教で言うところの八苦の一つで、欲しいものを手に入れられない苦しみのこと。
▽この夢のように、大きく太い八重桜は、現実にはあり得ませんよね。この満開の八重桜を夢で見たときには、心が実際に震えるほど感動しました。それは何物にも得がたいほどの美しさが、そこには在ったからです。私は見えなくなってから数年間は、決まって春も早いうちに満開の桜の夢を見ました。夢は色々で、学校の校庭や神社の境内にある沢山の桜が満開に咲いている夢や、山頂に続く桜並木が見る見るうちに一斉に咲き始め、あっという間に満開な桜並木のトンネルを作る夢などです。その夢すべては、天然色に彩られた、映画の映像のようでした。
話は変わりますが、皆さんは自分の住んでいる街のことをどれくらい知っていますか。
私は、行田に越してくるにあたり、その昔行田にあった石田三成の忍城攻めを題材にした和田竜さんの「のぼうの城」を読んでみました。そして、行田の歴史の、ほんの一端を知りました。
皆さんは、のぼうの城ののぼうは「でくの坊」からきていることは知っていましたか?
次の詩は、少し、ふざけすぎかなとも思いましたが、楽しんでいただけたなら嬉しいです。行田市のことを書いてみました。

〈行田市の独り言〉

お主は拙者 行田市のことを知っておるかな
いにしえには「武蔵の国埼玉郡(さいたまごおり)に位置し
江戸時代には、忍藩(おしはん)が生まれ
江戸後期からは足袋が盛んに作られ始めたのでござる
知っておったかな
忍城(おしじょう)は室町時代に築かれた
それはそれは歴史のあるお城なのでござる
古くは 上杉謙信から
火攻めにされ
石田三成の大群に攻められ
水攻めにされても
決して落ちない城であったのでござる
どうだ 恐れ入ったであろう
なになに 恐れ入らぬとな
では これを知っておったか
市の木は「イチョウ」
市の花は「きく」
市の日は「五月三日」
どうだ 知っておるかな
なに これも知っておるのか
では これはどうだ
日本屈指の足袋の産地「行田足袋」として知られ
和装文化の足元を支え続け
「足袋蔵のまち行田」が日本遺産に認められておるのでござる
それに加え
全国有数の 大型古墳群
「埼玉(さきたま)古墳群」も国の特別史跡に認められておるのでござる
まだまだあるぞ
スターダスト☆レビューの根本要殿は拙者行田市出身なのだ
しかも根本要殿の兄上は
行田市で医師をしておるのでござる
どうだどうだ 知らぬであろうが
なにー!これも知っておったのか―!
まいったまいった
もはやお手上げぎゃな
ところで お主は和田竜さんの書いた「のぼうの城」を読んだかな
拙者は読んでおるぞ
真(まっこと)愉快な草双紙であった
ここだけの話だが
拙者は足袋の一大生産地などと持て囃されておるが
実は拙者は
五本指そっくすの愛用者でござるよ
ジャンジャン!
おあとがよろしいようで
ではさらばでござる!

※草双紙(くさぞうし):江戸時代には今で言う小説のことをこう言ったようです。

▽私は、この詩を書くにあたりPCで調べました。埼玉の皆さんは、知っていることばかりだったと思いますが、私にとっては新鮮でした。PCでいろいろと検索してみることも楽しいですよね。
実際に行田に住んでみて思うのは、地震を含めた災害も少なく、田舎でもなく、都会過ぎずに案外住みやすい町だと感じています。
ただ、見えない私にとっては、音の出る信号機が増えると助かります。付け加えて言うと、春になると利根川や荒川の堤防が、一面に咲く菜の花で飾られることや、遠くに富士山の顔が見えることには、驚きました。埼玉の北部は、奇麗な街が多いようです。
今回もありがとうございました。
石田眞人でした。