第二十二号 夏の始め
突然ですが、さだまさしさんの『奇跡』と言う曲を知っていますか?確か、去年大晦日の『NHK紅白歌合戦』でさだまさしさんが歌った歌だったと思います。以下に、その歌詞の一部を紹介します。
♪どんなに切なくても…必ず明日は来る…長い長い坂道上るのはあなた一人じゃない♪
この『奇跡』と言う曲は、三十年以上前の曲だったと記憶しています。私が初めて聞いたのは、コマーシャルソングとしてでした。どんなコマーシャルだったのかは覚えていませんが、有名メーカーの自動車のコマーシャルだった?ような気がします。
コマーシャルソングだったので初めて聞いた時は曲の一部だけでしたが、次の日にはCDショップに走り、この『奇跡』を買い求めました。
そのころ、私はある衆議院議員の船橋事務所で働いていました。当時はまだ、中選挙区制で船橋は、千葉一区(千葉市・市原市・八千代市・習志野市・船橋市)に属していました。

そこで働くようになったきっかけは、その議員の千葉事務所に知人がいて、その知人の「手伝ってくれないか」の一言でした。強い好奇心から依頼を受けたものの、慣れない仕事ばかりで、毎日が苦悩の連続でした。そんな時に出会った曲が『さだまさしさんの奇跡』だったのです。
初めの詩は、その頃の苦労を想ったときに、心に浮かんできた言葉を書いたものです。その頃は、精いっぱい背伸びをして私の親以上の世代の人と向き合っていたので「自分を大きく見せたい」と思っていました。そんな無理は続きませんよね。
その時の、自分に向けた戒めでした。読んでみてください。

〈心に浮かぶ雲(自戒)〉

愛されたいと思えば思うほど
心は弱くなって行く
認められたいと考えた時から
心は狭く小さくなって行く
悲しみから目を背ければ
心は失われて行く
苦労から逃げれば
夢は遠く離れて行く
愛することで
強く大きな心を持つことができる
悲しみを知れば
優しさに満たされる
苦労を超えれば
大きな喜びが待っている
それが因縁果なのかもしれない
・・・・
物に執着すれば
過分な欲が湧き
欲を持てば
物に苦しめられる
欲心が苦を生み
苦が欲心を育て
幸いが去って行く
お金を掴めば
お金に振り回される
地位にしがみつけば
地位に押しつぶされる
逃げてばかりいると
袋小路に迷い込む
他人に牙をむけば
自分の牙で 自分自身を傷つける
責任を転嫁すれば
心の成長は止まる
刹那的な生き方は
現実からの逃避にすぎない
相対的な人生は
空しさしか残らない
自分の人生は
自らがfrontierでなければならないと考える
・・・・
まっすぐ進むもよし
回り道するもよし
悩み迷うもまたよし
ただ目標を定め
粛々と歩を進めれば
やがて何かが見えてくる
耐えがたきを耐え
忍びがたきを忍び
恩讐を恩讐視せず
そして 愛して行く
この世の中で
一番つらいのは
人を憎んでしまうこと
となりの人を愛せないこと
真の愛はすべてを包み
見せかけの愛はすべてを遠ざける
人生は愛する修行
耐えることから始めてみよう
憎しみを愛に変え
ただ無我無心で
清らかなmindを掴むまで

▽皆さんは、どんな自分になりたいと思っていますか?その課題は、誰しもが人生をかけて死ぬまで葛藤し続けることだと思っています。それを想うと、終焉を迎える時の自分が楽しみになります。
次の詩は、塩原センターで、自立訓練を受けている時のことを思い出して作ったものです。その頃は陽気も良く、時間的な余裕のある生活をしていたために、朝は涼やかな風の吹く山間の里にある塩原センターの敷地内を、優雅にも散歩をしていたのでした。
その時の出来事です。ただ事実だけでなく、創作を含め描いてみました。皆さんも、心にゆりの花が見えてきたなら、私の詩も、まんざらではないということですね。

〈夏の朝〉

『木漏れ日に ゆり一輪の薫る朝』
セセラギ響く山間の
涼やかな初夏の朝に
すこしだけ早起きをして
いつもより遠くまで 歩いてみた
ふあっと吹き去った 風の中に
ゆりの香りを見つけ 深呼吸をする
・・・・
ゆりの香りに魅せられて
風を頼りに歩みを進めた
数歩行くと 薫る風の先に
小高く繁茂した 杜があり
そこに木漏れ日を浴びて
一輪のゆりは咲いていた
私は そっと手を伸ばし
ゆりに触れてみた
その刹那
あなたの笑顔が脳裏に浮かんだ
そして玉響
心に一輪のゆりは最多

▽視覚障害者としての私は、すべてにおいて塩原センターから始まったのでした。
思えば、あれからもう、十年以上過ぎたのです。その十年の間に、東日本大震災や熊本地震、広島や九州、そして北関東や南東北の大水害があり、それに加え、千葉は大型台風に悩まされました。忘れられないのは、いつ治まるのか予想さえできない、新型コロナウイルスの猛威です。
私もそうですが、皆さんも個人的にも沢山の出来事があったのではありませんか。
紆余曲折した人生は美しく、苦しさ辛さの中にきらりと光る喜びが隠れているのですね。その輝きを見つけられるか否かは、自分次第なのですね。
ありがとうございました。
石田眞人でした