第117号 憎しみは…
いきなりですが、皆さんにも、何かを…または誰かを、憎んだ経験が誰しもがおありのことと思います。もちろん、そう言う私自身も何度かありました(偉そうに言えることではありませんが!)。
確か、マザーテレサ?によると『憎しみはサタン(悪魔)が牛耳っている(ぎゅうじっている)』とのことです。それを読んだ時に、私は人を憎むと悪い方悪い方へと、悪魔に引っ張られるのではないかと想ったのでした。
余談ですが、サピエ図書館のおかげで、見えなくなってから、種々雑多な本を読む機会が増えました。
初めの詩は、己の行状を回顧してみたときに、自らの力のなさを棚に上げていた自分に言い聞かせるために作って見ました。どうぞ読んでください。

〈空疎〉

辛酸を嘗め尽くした日々
あの十数年間は
もしかして泡沫
今思えば
泡と消えた日々
総ては
時間が解決してくれると
信じようとしていた
朝目覚めると
雲が風に流れ
消えて行くが如く
心にも
青空が広がると
儚い希望に縋っていた
現実は違った
辛酸は
嘗めても嘗めても
消えることはなかった
人を憎み
恨んでいるうちは
決して地獄から逃れることはなく
己を顧みることを
始めてからは
遠くの向こうから
僅かな光が見えてきた

※ 空疎(くうそ):見せかけだけで、しっかりした内容や実質がないこと。また、そのさま。空虚。

▽ まさに、人生は山あり谷ありですね。ありきたりの表現ですが、この表現方法がぴったりなように思えてなりません。
次の詩は、丸々私の空想から生まれた作品です。見えないゆえの詩です。暑い夏を少しでも心地よく過ごせたならと思い、精一杯頭を巡らせて心を澄ませてみました。
どうぞ読んでください。

〈シンクロ(共鳴)〉

光る青さに魅せられて
雲一つない
川のほとりを歩く
燦燦と降り注ぐ
陽光に身を任せ
せせらぎのリズム
夏の鶯の歌
シンクロする心
身体は何時しか
宇宙を翔ける
・・・・
雨上がりの朝
大地の香りに誘われて
木漏れ日を歩く
そよ吹く風の柔らかさ
喃々と囁く青葉のハーモニー
揺れる光と
森の静けさ
心は空しく
瞑想の世界
ふと気付けば宇宙に佇む

※ 喃々(なんなん):口数多くしゃべり続けるさま。

▽ 私は、見えなくなってから、町にあふれる、風や花の匂いに心惹かれるようになりました。
今年の春は、鶯の声が聞こえてこないことが、妙に気になったのでした。
今回も最後までお付き合いくださりありがとうございました。
小澤真人でした