第六十一号 生きているうちに
皆さんは、あと何年生きていられると思いますか。残された人生を、どんな風に歩んでいきたいと考えていますか。
先日読んだニュースの中に『36歳の男が、ホテルの従業員を呼びつけるために非常ベルを2回鳴らして逮捕された』とありました。若者の間では、迷惑動画を流しているというニュースもあります。
そんなニュースに接すると、ちっぽけなことで腹を立てたり、くだらないことをして注目を浴びようとしたりすることなく、自分という存在を考えて、自分自身をもっと大切に生きた方がいいのではと思ってしまいます。
それは私自身も腹を立てやすいことを自認しているが故の、考えです。
ある先生は言いました。「明日死んでしまうかもしれないと思って過ごしていると毎日が充実する」と、です。
私は、目が見えなくなってから、残りの人生を考えるようになりました。悔いのない人生と言っても人それぞれ考え方は違うことでしょう。私が一番に思うのは、晩節を汚さないこと…そうして心の面での成長です。
次のことはあくまでも個人的な考え方ですが、死んでしまえば何も残らないと考えるか、死後もまた、心あるいは魂は残ると考えるかで、残りの人生を歩んで行く上での心構えは変わるのではないでしょうか。私は、死んでも心は残り、また生まれ変わる機会もあることを願っています。
なぜかと言えば、ただその方が楽しいからです。それは人それぞれなので、私と反対意見の方も大勢いらっしゃることでしょう。
私は、日本で生活しているためか、仏教の教えに触れる機会が多くあります。ある本の中に「次に生まれ変わる時の為に、人格を磨きなさい。」とありました。私はそれを単純に信じ、行動に移しているのでした。
始めの詩は、春到来の喜びを書いてみました。
皆さんは、春夏秋冬特に好きな季節はありますか。私は死んだ後にも心は残ると思っていますが、生きているうちにしかできないこともあるような気がしています。
それだからこそ、季節季節を楽しみたいと思うのです。では、どうぞ読んでください。

〈陽だまりそぞろ歩き〉

ボウッとした日曜日も
ゆるゆると動き出した
立春も過ぎ
朝の始まりは
ほんのちょっぴり早くなり
夕暮れは
ようやく遅くなり始めた
・・・・
まとわりつく風と
力がました太陽に
胸はウキウキ
心はポンポン弾みだす
それは大好きなお日さまに
いつもいつまでも
優しく包んでもらえる季節
・・・・
野に咲く花と
鶯の唄に
頬を染め
ブルースカイに
夢は解け
森に木漏れだす陽光に
命の目覚めを見つける季節
・・・・
冷たい風は
のん気な冬の忘れ物
暖かな太陽は
笑顔の似合う春仕様
そぞろ歩く陽だまりに
心を溶かして
光る涙は真珠色

▽ ようやく私は、寒い冬も暑い夏もさほど苦にならなくなってきましたが、雨や曇りの日が続くと、イライラしてくるのです。皆さんはいかがですか。
次の詩は、目が見えなくなってから、過去を想起する機会が増え、その内容を書いたものです。
国リハで、人は忘れる動物であると学びました。しかし、忘れられない思い出や後悔も沢山ありますね。
ではどうぞ読んでください。

〈生きているうちに〉

目を失くしてから
過去の日々に
心を馳せる時間は増え
夢を見る回数も増えたのです
死の訪れる前に
言いたいこともいくつかあります
・・・・
幼馴染のKOちゃんへ
君は小柄で可愛らしく
勉強ができ
国語の教科書を
すらすらと読む姿には
なぜか心は弾みました
まだ小学校の低学年の僕は
好きと言っても恋愛感情とは違い
姉のように頼もしく
妹を見ているようで慕わしかったのです
・・・・
憧れのA君へ
君は誰にでも
同じように接し
僕にも穏やかな笑顔を向けてくれました
優しい目をして教養があり
物静かな雰囲気を持ち
背筋を伸ばして座る姿を
僕は後ろからそっと見ては
少しでも君に近づきたいと
秘かに努力をしていたのです
・・・・
いつも堂々としていたOH君へ
何があっても物怖じ(ものおじ)せず
どんな時にでも胸を張り
前を見据えて歩く姿は頼もしく
好きな女の子に
当たって砕ける姿勢は
男気に溢れていました
臆病者な僕は
金魚の糞のように
君の後ろを追い掛けていたのです
・・・・
僕の初恋のSSさんへ
今更ですが
艶やかに延びた黒髪を
背中で二本の三つ編みにして
揺らして歩く姿は素敵でした
私の苦手な英語が得意で
部活はテニス部でしたね
コートを翔ける姿はまるで
若かれし頃の美智子さまのように
爽やかさに溢れていました
・・・・
MS先生そしてUM先生へ
先生と出会って人生変わりました
平面的で刹那的な人生から
立体的に考えて行動し
自分を律する努力をしようとする
そんな生き方に変わったのです
辛く苦しい中にも
喜びを見出すことや
感謝する気持ちを
持つことができるようになりました
・・・・
目を失くしたって
人生まんざら悪くはありません
大きな失敗をしたって
人生は何度でもやり直せると教わりました
こんなに小心な私でさえも
ここまで来ることができました
まさに人生塞翁が馬ですね
それからそれから
今日も森羅万象を生かす太陽に手を合わせ
一期一会に感謝感謝

▽ 皆さんは、楽しかった思い出だけでなく、後悔などの思い出もたくさん持っていることでしょうね。
私は時々、中学の頃から、もう一度やり直してみたいと思うことがあります。
最後の最後に愚痴になってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。
石田眞人でした